エックス線の管理 エックス線の減弱

エックス線の管理

指数関数減弱

単色エネルギーで細い平行ビーム(線束)という理想的なばあについて考えます。エックス線のエネルギーと物質の種類を決めると、対応する減弱係数が定まります。減弱係数μは物質の深さや光子数には依存しないので、あるエネルギーのエックス線が物質に入射すると、どの厚さのところでも一定の確率で相互作用が起こって光子数が減っていきます。

数式では相互作用を免れたエックス線の強度、Iは厚さxに対して

I=I₀e^μx

という指数関数で表されます。ここで、I₀は厚さ0の点(入射時)の強度、eは自然対数の底(2.718)です。根幹数は厚さととmに連続的に小さくなることを示していて、減弱係数が大きくなると下がり方が激しくなることがわかります。

この式から減弱パターンは直感的に理解しにくいため、強度が半分になるまでの厚さを半価層、hと定義し、次式のように変形してみます。

I=I₀(1/2)^x/h

厚さがちょうど半価層と同じ時(x=h)強度は1/2に、2hの時は(1/2)^2=1/4、3hの時は(1/2)^3=1/8 と減ってゆきます。半価層ごとに半分になってゆくと考えればわかりやすいです。

減弱係数と半価層の間には

μh=log₀2≅0.69という反比例の関係があります。

1/10価層、Hを定義することもできます。

I=I₀(1/10)^x/h

および μH=loge10≅2.3

なお、半価層との間には、次式の関係が成り立ちます。

H/h=(loge10)/(loge2)≅3.3

いくつかの計算例を出します。

[例題1]

厚さ2㎝の鋼板を通過した後のエックス線の強度と入射時と強度との比I/I₀を求めよ。但し、このエックス線に対する鋼板の半価層は5mmとする

解説:厚さの単位を揃えると I/I₀=(1/2)^2/0.5=(1/2)^4=1/16

[例題2]12㎜の鋼板を置くとエックス線の強度は入射時の8分の1に減った、半価層はいくらですか?

解説: (1/2)^12/h=1/8=(1/2)^12/h=(1/2)3 指数部分が等しいので、12/h=3 となり、h=4mmとなる

[例題3]

半価層10mmの鋼板15mmと、半価層30mmのアルミニウム板15mmの2枚を重ねると強度はいくらになるか?

解説:2枚重ねの場合が、各々の減弱割合の積となります

I/I₀=((1/2)^15/10)×(1/2)^15/30= (1/2)^((3/2)+(1/2))=1/4

散乱線の影響

エックス線の散乱線の指数関数減弱は、単色エネルギーで細い平行ビームという理想的な条件で成り立ちます。この条件では、コンプトン効果とレイリー散乱によって散乱されたエックス線は。一次ビームから逸脱すると仮定しています。しかし、エックス線ビームに広がりがある場合や。点線源からのエックス線の一部が測定器に入ってきます。この散乱線の寄与をビルドアップ係数(再生係数)Bによって補正します。

すなわち

I=BI₀e⁻^-μx

B=(全エックス線)/(直接線)=(直接線+散乱線)/直接線=1+散乱線/直接線

連続エックス線の減弱

指数関数減弱からずれるもう一つの原因は、エックス線が連続エネルギー分布を持つことである。およそ1MeVまでの範囲では、どの物質でもエックス線エネルギーとともに減弱係数は小さくなります。制動エックス線のように零0から最大値まで分布するような連続エックス線では、各エネルギーに対する減弱係数が異なるので、同じ厚さを通過しても各成分の減弱割合(e^-μx)が異なることになります。

したがって、低エネルギー成分の減弱割合が大きく、高エネルギー成分はあまり減弱しないため、スペクトルの形が右へシフトし、実行エネルギーが高くなります。

低エネルギーのエックス線を軟エックス線、高エネルギーエックス線を硬エックス線という事があり。このようなスペクトルの変化を硬化と言います。

実効エネルギーと平均減弱係数はある厚さまで大きく変化し、以降ほぼ一定値となります。なお、この原理は、エックス線装置の安全装置の一つである「ろ過板」で利用されています。

距離の逆二条則

エックス線管では、集束カップで電子ビームが絞られ、実効焦点はほとんど点と見なせるくらい小さいです。点状の光源から一定距離だけ離れたところでの明るさと同様に、点線源については、物質と相互作用によるエックス線強度の減弱とは無関係に、エックス線の強度(∝単位面積あたりの光子数)は距離の二条に反比例します。

強度∝1/(距離)²

【例題4】

135度方向の後方散乱線の空気カーマ率が焦点1mの所で180μGy/hであった。同じ方向の3m離れた地点での空気カーマ率はいくらか。

180×1²/3²=20μGy/h

なお、点線源と測定点との間に物質(遮蔽体)が置かれると、e^-μx 又は (1/2)^(x/h)倍だけ減弱を受けることになります

【例題5】

エックス線管の焦点Sから1mの場所A点での1㎝線量当量率は200μSv/hであった。焦点から5mの場所B点での1㎝線量当量率を2μSv/h以下とするためには、半価層2cmの鋼板の厚さを何㎝以上としなければいけないか?

まず、遮蔽体を置かない状態でのB点での線量率を計算します

I₀=200×(1^2/5^5)=8μSv/h

これを厚さxcmの遮蔽体によって2μSv/hに下げるので、

2=8×(1/2)^x/2

2/8=(1/2)^2=(1/2)^x/2  答え x=4cm

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