エックス線の管理 エックス線の相互作用

エックス線の管理

相互作用の種類

エックス線が物質に入ると、原子と相互作用を起こしてエネルギーを失ったり方向が変わったりする。以下、主な4種類の相互作用を説明します

1:レイリー散乱

光を含めた電磁波の散乱(古典散乱)のひとつで、原子全体(原子核に束縛された軌道電子)による散乱で、電磁波の波長は変わらず方向だけが変わります。

この時位相(波の山谷)も保存されるので散乱線は互いに干渉します。(このため可干渉性散乱やコヒーレント散乱と呼ばれることもあります)

2:光電効果

エックス線は光子として原子と相互作用をします。光子エネルギーが原子に吸収され(光子は消滅し)、そのエネルギーが主に内殻電子に与えられて飛び出す現象を光電効果といいます。

この電子を光電子といい、光子エネルギーから電離エネルギーを差し引いた分のエネルギーを持ちます。

光電効果の結果、内殻に空位が生じますので。二次過程として特性エックス線が放出されます。光電効果に伴って発生する特性エックス線を蛍光エックス線ということがあります。

3:コンプトン効果

この相互作用では、光子が軌道電子と完全弾性衝突し、そのエネルギーの一部を電子に与え、自らは散乱されます。

飛び出した電子はコンプトン電子または反跳電子といいます。

光子エネルギーは小さくなるので、波長で言えば、散乱エックス線の波長は入射エックス線より長くなります。どの方向に散乱されやすいか・・・エックス線エネルギーが低い場合は横方向(90度)より後方にエネルギーが高いエックス線については前方に散乱されやすいです。

4:電子対生成

高エネルギーの光子が消滅し、原子核の近くで2つの電子(電子とその反粒子である陽電子)を創る現象を電子対生成と言います。

相対性理論によって質量とエネルギーは等価であることが示されたのですが、光子エネルギーが2つの電子の質量に変わります。このためには2つの電子の静止質量分、1.02MeVを超えないと起こりません。

以上、4つの相互作用をいかに纏めます

<レイリー散乱>

 電磁波/光子: 電磁波

 散乱線: 波長変化なし

 二次電子: -

 備考: 干渉

<光電効果>

 電磁波/光子: 光子

 散乱線: -

 二次電子: 光電子

 備考: 蛍光エックス線

<コンプトン効果>

 電磁波/光子: 光子

 散乱線: 波長長くなる

 二次電子: コンプトン電子

 備考: 散乱線

<電子対生成>

 電磁波/光子: 光子

 散乱線: -

 二次電子: 陰電子と陽電子

 備考: 1.02MeV

減弱係数

加速された電子が物質に当たった場合、主に軌道電子とクーロン衝突を次々と繰り返してエネルギーを失うことが説明されました。これに対して電荷を持っていないエックス線の場合は、軌道電子の近傍を通過してもクーロン力が働かないため、荷電粒子のように衝突することはなく、長い軌道を走る間にたまたま原子と相互作用(レイリー散乱、光電効果、コンプトン効果等)を起こす事になります。このように、エックス線と物質の相互作用は確率的です。

エックス線の相互作用の起こりやすさは、通常、減弱係数(単位cm⁻¹)で表されます。

正確には、物質中単位の長さ当たりに相互作用を起こす確率と定義しています。減弱係数はエックス線のエネルギーと物質の種類によって異なります。アルミニウムの減弱係数のエックス線エネルギーの依存性のように、一般には1MeVまでの範囲では、エネルギーが高くなるにつれて減弱係数は小さく(相互作用を起こしにくく)なります。レイリー散乱、光電効果、コンプトン効果の各々の成分では、低エネルギーでは光電効果が、コンプトン効果が主となっていることがわかる。

異なる物質に対する減弱係数の違いは、一般に原子番号Zが大きくなるにつれ減弱係数は大きくなる(光電効果は原子番号の4~5乗に、コンプトン効果は原子番号にほぼ比例する)

なお、減弱係数を物質の密度で除したものを質量減弱係数(単位cm²/g)という。減弱係数の詳細なデーターは質量減弱係数で表されているものが多いです。また、質量減弱係数との違いを明確にするために、減弱係数は線減弱係数と表すことがあります。

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