エックス線の管理 エックス線の発生

エックス線の管理

連続エックス線の強度とスペクトル

制動放射に伴って放射される制動放射線のエネルギーは、高エネルギー電子が近づく原子核までの距離によって異なるので、強度は0から最大限まで分布します。したがって、制動エックス線は、連続エックス線と呼ばれることが多いです。

最大エネルギーは、電子の運動エネルギーのすべてが制動放射で失われた時に対応するので、連続エネルギー分布の最大値は電子の運動エネルギーに等しいです。つまり、最大エネルギーは管電圧によってのみ決まります。

*強度とその分布について

「エックス線の強度」は、厳密には「単位時間当たりの放射エネルギー」や「エネルギーフルエンス率」など、光子数とそのエネルギーの積をベースとした量で正確に定義されるべきですが、理解しやすさを優先し、当該分野の慣習に従ってこの表現となっています

また、エックス線のエネルギーを分割し、その幅内の強度(正確には、単位エネルギー当たりの強度)を図示すると短冊が並ぶような図となります。(例えばエネルギーを10keV毎に分割すると、20keVから30keVのエックス線強度は斜線で示した面積で表される)。このエネルギー分布を「スペクトル」と言います。 *全面積を強度全体、「全強度」と表現しています。

エックス線の波長とエネルギーは反比例するので、最大エネルギーに対応して最短波長が存在します。

最短波長[mm]=1.24/管電圧[kV]

*管電圧をV「V]、素電荷をq[C]とすると、ターゲットに入射する電子の運動エネルギーはqVです。この電子が制動放射を起こし、この時の運動エネルギーのすべてが制動放射線に移った場合(E=qV)に、制動放射線エネルギーが最大、即ち、波長は最も短くなります。従って、

qV=hc/λmin より

λmin=hc/qV = [(6.6×10^-34)×(3.0×10^8)]/1.6×10^-19×V=(1.24×10^-6)/V[m]

となります。VをkV, λminをnm単位に合わせると上記の式になります。

例えば、管電圧200kVでは、最短波長は0.0062nmとなります。

全強度Iは、実験的に(おおよそ)次のような式で表されることが分かっています。

全強度∝(管電流)×(管電圧)²×(ターゲットの原子番号)

上式を電力(管電流×管電圧)で割るとエックス線への転換効率(発生効率)となり、工業用エックス線装置では高々1~3%程度となります。

2:管電圧、管電流によるスペクトルの変化

あるターゲットのエックス線管で管電圧を一定にすると、最大エネルギー(最短波長)および発生効率は同じなので、エックス線強度は管電流に完全に比例します。

一方、管電流を一定にして管電圧を変化させると、最大エネルギーが高くなる(最短波長が短くなる)とともに、全強度もおよそ2乗に比例して大きくなります。従って、(a)エネルギーでは右側に、(b)波長では左側にシフトします。

管電圧をさらに上げて入射電子エネルギーが高くなり、ターゲット元素のK殻電子の電離エネルギーを超えると、K殻電離が起きるようになります。電離後、外殻電子がその穴を埋めますが、その際各軌道の準位差に相当するエネルギーを特性エックス線として放出します。したがって、連続エックス線の上に特性エックス線が加わることになります。特性エックス線が発生する最低の管電圧を励起電圧といいます。

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